2013年2月28日木曜日

鼓遊流記譜 読み方と書き方

鼓遊は記譜法として五線記譜法をベースに、和太鼓特有の記譜法を導入したものを使っています。まだまだ試行錯誤の段階にありますが、ある程度体系化できてきたので、ここに紹介しておきます。

なお、日本古来の記譜法を採用していないのは、ほかの楽器とセッションする際にどちらも理解できる共通の言語化方法を持っていないと話が通じにくいためです。共通言語として五線記譜法をベースに採用しています。

演奏する太鼓の面ひとつに対して、五線譜の線1本が対応しています。

1. 基本記譜 単面


表記方法はピアノに合わせています。ピアノは通常、左側が低音、右側が高音になります。このため、表記にあたって線の上(高音)には右手で叩く音、線の下(低音)には左手で叩く音を表記します。上記で叩く手で表記すると「右 右左右左|右 左 」のようになります。

2. 基本記譜 複数面

一人の演者が締太鼓、桶胴、宮胴など複数の太鼓を組み合わせて一人で演奏する場合、それら太鼓は基本的にピアノと同じように、低い音の太鼓を左、高い音の太鼓を右に配置し、楽譜も同様になります。下の線が低い音の太鼓(左に配置したもの)、上の線が高い音の太鼓(右に配置したもの)になります。そして単面のときのように、それぞれの線の上下で右左の打つ手を表現しています。

3. 基本記譜を使った総譜


基本記譜をベースに楽譜を書くと上記のようになります。この総譜で、どの楽器を使い、右左の打つ手順、どの太鼓を叩くか、といったことが表現できます。より細かい表現が必要になった場合、五線記譜法の表記を使って記述を追加するか、五線記譜法に表記がない場合には日本語によるコメントを追加するなどします。

4. 拡張記譜 繰り返し記譜



和太鼓(和太鼓に限りませんがパーカッション系の演奏)では、同じリズムを繰り返し演奏することが多い楽曲です。通常の五線記譜法でこれを書くと、5分程度の曲でも総譜が100枚を超えるなど現実的ではなくなります。繰り返し表記を使っても、かなり見にくい楽譜になってしまいます。

そこで現在は上記記譜のように、二重線で囲った部分を、上の数字の小節数だけ演奏するという表記をしています。上記であれば、8分打ちを3小節繰り返すという意味になります。繰り返しの回数ではなく、それを何小節演奏するのかを表記しているところがポイントです。


上記のように記載した場合、全部で4小節ですので、繰り返しの回数としては2回ということになります。以前は繰り返しの回数を書いていたのですが、繰り返し回数は混乱を招くことが多く(4小節を4回、8小節を4回、2小節を4回など、繰り返し回数と実際の長さが異なること、繰り返しの回数と小節数が会話の中で混在して意思疎通に齟齬が発生することが多いため)、現在は小節数に統一して表記しています。

5. 拡張記譜 構成記譜


前述した繰り返しの表記を採用しても、5分程度の曲で10ページから40ページくらいの総譜ができあがります(休符の楽器も全部表記するとさらに増えます)。和太鼓はほかの楽器と異なり、演奏中に楽譜をめくるという作業が困難ですので、通常は楽譜を見ません。しかしこれではなかなか曲が覚えられないのも事実です。

そこで、総譜とは別に上記のような構成だけ書いた記譜を用意します。これをベースに自分が担当する楽器の演奏内容を書き込むなどしておけば、これを見るだけでだいたいの流れが把握できることになります。練習の初期段階では演奏までにこの楽譜を見たり、演奏中に横目で構成を確認するなどして稽古を行います。